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2010年9月13日 (月)

鬼県令三島通庸は塩原温泉の恩人

福島の県令(知事)に就任するや高湯温泉の源泉を官舎のあるふもとの町に引き、営業休止に追い込んだ三島通庸。薩摩閥を率いる権力者大久保利通に見込まれて山形、福島、栃木の県令を歴任する。高湯のくだりはこちらをどうぞ。

(三島通庸にこだわってます。なんか、こうした強引な政治家に魅力を感じるんです。危険だけど興味深い。何もしない、できない凡庸な政治家よりも必要とされているのかもしれない。今の心境は、菅直人よりも小沢一郎)。

徹底した自由党嫌いで、大久保が送り込んだ目的は、奥州の治安維持だ。戦火は消えても奥州には不満が蓄積し、特に会津の情勢は不安定だったろう。強引な土木工事に怨嗟の声が渦巻いたが、三島は徹底した弾圧で大久保の期待に応えた。

この「土木県令」を恩人としている温泉地がある。栃木県の塩原温泉だ。立派な「三島通庸紀恩碑」が建てられている。

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三恩人の一人に数えられている。一人は尾崎紅葉、そして三島通庸と奥蘭田(おく らんでん)。

紅葉はここで「金色夜叉」を執筆、続編には塩原も登場する。

奥は東京実業界の重鎮で、「塩原紀勝」を出版して、そのすばらしさを世に広めた。

三島は土木工事です。

「武蔵野夫人」の描写を確認するために大岡昇平全集を借りてきて、他の作品も斜め読みした。(「武蔵野夫人と恋ケ窪」についてはこちらをご覧ください)。

その中に「逆杉」(さかさすぎ)があった。塩原の文学散歩。取り上げるのは尾崎紅葉。

まず「趣向は既に発端より破綻していたともいえる」と「金色夜叉」を認めない。お宮が富山と結婚、貫一が高利貸しになるのが「最初から自主性を持っていない」と切って捨てる。

しかし「金色夜叉」論が目的ではない。紅葉の自然描写の巧みさにある。紅葉は「塩原紀行」で三島が開通させた「塩那街道」に触れている。


長いのでここで一服。三島県令が休止に追い込んだ高湯温泉の風景写真を。硫黄の匂いが懐かしい。また行きたいな。


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さて、尾崎紅葉。「三島県令の嘗て衆怨を懼(おそ)れず開拓せし道路と云うほどありて目覚しき工事なり。かかる広漠なる原野に此の大坦途の貫くを見る、寧ろ奇異の念あるばかり也」と感心してる。

これに対して大岡は冷ややかだ。「明治政府の土木事業に対する文士の賛嘆の情が、無邪気に現されている」。

さらに三島についてもこう皮肉る。「三島県令はこの時福島県令を兼ね、自由党弾圧で悪名高かったが、その道路建設マニヤのため、土地収奪や土木徴用の労苦を知らない後世に、美名を残したのは幸せであった」。

「しかし彼が開墾地を貫いて、塩原へ通ずる道路を敷いたのは、あながち観光のためではない」と転調する。

1つには、塩原と会津の関係を弱めることにあった。那須への道をつくることによって「新道路によって、この依存関係を逆転しようというのが、三島県令の目的だったようである」と鋭く指摘する。

反政府運動の拠点となりかねない会津の力をそぎ、あわせて自由民権運動が広まることを防ぐ。

三島は役得を顕官や軍人たちにもふるまった。「開墾地の大部分は、大山、品川等明治の顕官に安く払い下げられた。開墾はつまり軍人を潤す目的を持っていたわけで、乃木将軍もその小さな分け前にあづかったにすぎない。そして軍人達は新しい所有地に近い塩原の渓谷に別荘を構えるのを好んだ」。

皇太子(後の大正天皇)が那須を気に入ると自分の別荘を献上(今の那須御用邸)して、皇族も誘致した。

大岡は感心する。「産業道路を敷くと共に、沿道の観光地を宣伝して、輸送量の増加を図る現代的開墾計画を、三島は知っていたわけである」。

宣伝して付加価値をつけて発展させるのは、有名私鉄も取った手法だ。鬼県令は慧眼の持ち主で、金儲けと発展がイコールだとよく分かっていた。たいしたものだ。こういう人を必要とする時代もあるということか。さてこれからの日本は…。

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