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2010年6月 5日 (土)

ハケの庭園・滄浪泉園 小金井市

コンクリートの道路から一歩、門をくぐるとすぐに汗が引いた。2、3度は下がっただろう、湿度も低くなった感じだ。ハケの崖を利用して作られた滄浪泉園は訪れ人が少ないので独り占めの贅沢を味わうことができる。30分ほどぼんやりしていたが、他に2組が来ただけだった。

そうろうせんえん、と読みます。名付けたのは、大正8年、この庭に遊んだ犬養毅。小政党の立憲国民党を率いて辛酸をなめていた時期です。青い波の泉。「手や足を洗い、口をそそぎ、俗塵に汚れた心を洗い清める、清々と豊かな水の湧き出る泉のある庭」。
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(滄浪泉園の入り口。石の門標は犬養の筆)


何十年も俗塵に汚れた心は、そう簡単に清められないが、空気はうまい。肺は少しきれいになったかな。湧き水をためて池が作られている。池のぐるりを巡って崖を上がると東屋風の休憩所に出る。ものの10分もかからない。

東屋で黒井千次の「たまらん坂」(講談社文芸文庫)を開く。表題作のほか、武蔵野を舞台にした連作短編集だ。「おたかの道」「せんげん山」「のびどめ用水」など武蔵野の面影を残す場所がタイトルになっており、「そうろう泉園」も「ほろ苦い追憶の扉に閉じ込めた」はずの過去が、生臭く甦る舞台として設定されている。

黒井は富士重工で15年間サラリーマン生活を送っている。新宿の本社に通うのに便利な中央線沿線に住んだので、武蔵野には土地勘がある。高校は杉並の都立西。武蔵野を残す自然の地もたびたび訪れたのだろう。

作家の表現を借りよう。「…園内に足を踏み入れた。左右を熊笹やさつきに包まれ、その間から高く伸び上る赤松、楓、櫟などに天井を覆われた石畳の道はたちまち緩く下り始め、左にカーヴする坂を進むと交錯する枝のトンネルを脱けて案内板のある小さな平地に出た」
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(長屋門から入れば、うっそうとした木立)

「小ぢんまりとした池は、周囲の深い緑の底に沈みこんでいるかのようだった」

「池を巡る道が跡切れて飛び石に変った場所に水が湧きだしていた。水は石の両側を一心に洗って池へと流れ込んで行く」

東屋の脇に水琴窟がある。玉砂利の間に竹の筒を近づけ、反対側に耳を当てると水音が聞こえる。澄んだ高い音がかすかに響く。微妙な音階で、不規則な旋律を奏でる。

2メートルほど離れた東屋で文庫本を開いていると水琴の音が聞こえたような気がした。他の物音はしない。聞こえたのかもしれない。

昼下がりの庭園にいるのは私ひとりだった。

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