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2010年3月10日 (水)

近藤勇・産湯の井戸・その9

若い頃、人間くささが抜けている進歩史観がどうも面白くなくて八切史観を片っ端から読んだ。常識を覆した奇説が、既成の価値観を覆そうという時代にあっていたのかもしれない。なかでも「徳川家康は二人いた」は奇説中の奇説と膝を打ったものだ。歴史というよりも、八切ワールドの独自の解釈を楽しんだ。後に隆慶一郎も「影武者徳川家康」で家康は入れ替わったと題材にしている。

八切のオリジナルとばかり思い込んでいたがどうも違うらしい。「しかし、一読すれば気づくことだが、「徳川家康は二人いた』という小説のストーリーは、ほぼ全面的に『史疑』の内容に負っているのである。にもかかわらず八切は、『史疑』について、一言『参考にした』と述べる程度である。『史疑』にある史料を重引しながら、そのことを断っていない箇所もある」(「歴史民俗学21号[特集]検証・八切止夫」の「八切の徳川家康替玉説を読む」・礫川全次)。

オリジナルがあったのだ。村岡素一郎の「史疑」で、すでに「願人坊家康」(南條範夫、58)、「家康をニセ者と断定した男」(榛葉英治、63)、「徳川家康替玉説」(村本喜代作、65)などがあるらしい。まあ、八切意外史は「何とも怪しげである。このあたりのいかがわしさが八切の魅力でもあり、一時期はかなりの読者を得ていたのである」(同書、八切原住民史観と太田竜の「日本原住民」、青木茂雄)。

——ああ、太田ドラゴンも平岡正明も冥府に旅立ってしまった—ー


そんな八切の唱える除地説、何か訳があるなくらいに思うだけでいい。後に日野を訪ねたときに触れるが、洪水に流される前の土方歳三の生家も浅川と多摩川に挟まれた低地だ。

多摩はお鷹場だった。三鷹だけではない。一帯の狩猟などが制限されていた。餌になる虫だって、やたらに駆除してはいけない。農民たちには大変な苦労があったようだ。宮川家は、鷹場の管理というか、何か特別な任務をもって上石原宿から派遣されたのではないか。

新田開発と言ったって地続きの大沢村の人間が耕せば済む話だ。新田が増えれば石高がまし、下石原の年貢が増える。開発に伴う利益のほかになにか村に利益になるものが徳川家から与えられていたのではないか。

大沢村にも宮川さんがいる。勇の宮川家の分家か。では、どうして上石原でなく大沢に属しているのか。昔の村の境界は、アプリオリに決まっていたのではない。開拓した農民が属していた元の村が村域を広げていった。つまり縁続きで境が形成されていったのだ。開墾されない野原は、領主のものではあっても、農民の視点から見ると誰のものでもなかったのかもしれない。言ってみれば入会地か。とは言っても入会地でも入会の権利はある。宮川家の土地は上石原の入会地だったのか。いくら考えてもわからないので、疑問は疑問のままで、何かわかったらまた書きます。

この項の初めに、多摩連光寺の聖蹟記念館について触れた。その時、宮川家の人が多額の寄付をしたというが詳細は不明とした。ノートをめくっていたら、そのくだりが出て来たので紹介する。

「聖蹟記念館の建っている連光寺大松山の所有者は、調布市の宮川半助でした。宮川はすでに大正十二年富沢政賢らと『聖蹟記念館』を組織することを取り決めていました。宮川が記念館の土地一万五〇〇〇坪を無償で寄付した理由が『幕末京都で、多くの勤皇の志士を倒した新撰組の局長近藤勇が宮川家の出で、近藤の罪滅ぼしという意味があったからだ(沼謙吉前掲書、注・「多摩聖蹟記念館建設への道」ふるさと多摩 第5号)と言われています」と、「多摩と江戸ー鷹場・新田・街道・上水」(大石学編)にあった。

記念館ができたことで京王線の駅名も連光寺から聖蹟桜ヶ丘に変わった。大正になっても新選組の関係者は首をすくめていたんですね。

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