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2010年3月 6日 (土)

「ベン・ハー」ラモン・ノヴァロ版・キリストの物語 続続

ヘストン主演の「ベン・ハー」のサブタイトルも「a tale of the Christ」です。まず「Ben-Hur」と画面いっぱいに表示される。画面が変わって次にサブタイトルが出てくるので、印象は薄れる。タイトルの前にノヴァロ版では15分も費やしたキリスト誕生が駆け足で描かれる。59年の時点では、すでにキリスト誕生は数多くの映画で描かれて来たので、もう繰り返す必要がなかったのだろう。1925年の作品ではまだキリスト誕生は映像として描かれること自体が観客の期待感を満足させたのだろう。

有名な水飲みシーンでキリストは後ろ姿だ。ベン・ハーは「神よ助けたまえ」と祈るが、まだ水を与えたのが神の業とは認識していない。後に十字架を背負って歩くキリストを見たベン・ハーが「あの人だ!」と水をくれた人と同一と気づく心打ち震えるシーンの前提になっている。

その後、キリストは終盤まで直接には描かれない。族長のもとにいたときの東方の博士の話、恋人エステルの話に出てくるくらいだ。

クライマックスが一気にキリストの物語になるのは25年版と同じ。谷からの帰り。丘の上で愛を説いているキリストにベン・ハーは関心を示さない。絶望が支配していたためだ。エステルは近くに寄って目を輝かせて話に聴き入る。

ゴルゴダの丘に向かうキリスト、ここでベン・ハーが神の存在に目覚めるが奇跡はまだ起らない。それは嵐を避け洞穴に避難した母と妹、エステルに起こる。すべての罪を背負ってはりつけになったキリスト。激しい嵐が襲う中、母と妹は体が痛い、手が痛いともだえ、苦しむ。くぎが打たれ血が流れているキリストの右手のアップのインサートショット。エステルが気づく。母親の手が元通りになっている。顔もすべても。妹もそうだった。実に効果的なインサートだ。

ノヴァロ主演版よりもキリストに関する叙述は少ないが、トータルな構図は一緒だ。ワイラー監督は昔の作品と基本的構成は同じにしながら、キリストの登場を抑えて、より効果的にクライマックスを盛り上げたといえる。

どちらがすごいか。59年の作品は、そりゃあ圧倒的だ。スケール感、迫力、色彩、主人公など、こんな贅沢な映画はもう作れないでしょう。モブシーンでは、こんなに必要なのかと思わせるほどの大群衆だし、戦車シーンのカメラワークは圧巻、3時間半を超える長尺だけど、シーン一つをとっても中身が濃い。

ただ、25年版の戦車シーンのカメラワークも、よくぞ撮ったりと叫ばせる迫力だ。こちらを見て改めてヘストン主演作を見ると、キリストに関して簡略にした部分が、すごく理解できる。歴史スペクタクルとしてエンターテインメント作に仕上げてはいるが、実は宗教映画だということが押さえられる。その意味でも貴重な作品だ。

59年版が日本で公開されたのは翌60年。配収12億円のビッグヒット、2位の「アラモ」が6億4000万円だから倍も稼いでいる。ちなみに61年は「ウエスト・サイド物語」が稼ぎ頭で、配収はやはり12億円だ。歴史スペクタクルは続々とつくられ63年の「クレオパトラ」でピークを迎える。だが、興行成績が振るわずフォックスが経営不振に陥ったため以後、超大作は影を潜め、やがてアメリカン・ニューシネマが若者たちに支持されていく。

「クォ・ヴァディス」もローマでのキリスト教徒の迫害が主テーマだったが、「聖衣」(53)もシネマスコープ第一作として記録に残る。ヒロインのジーン・シモンズが「ローマの休日」のオファーを蹴って、こちらに出演したのは有名な話です。主演はリチャード・バートン。

カリギュラに追われてエルサレムに赴任した護民官がキリストを十字架にかける。キリストがまとっていた赤いローブをまとったときから彼の苦悩が始まる。彼の従者が持ち去ったローブを取り戻し、燃やすためにイスラエルに戻った護民官は、ローブを手にしたとたん啓示に打たれる。こうして信者となった護民官はローマで布教活動を始める。中心となるのはペテロ。そうペテロの殉教が下敷きにあるのですね。やがて裁判にかけられた護民官は、恋人のジーン・シモンズとともに刑場へと向かう。微笑みをかわす2人、喜びに満ちあふれた2人のアップに「ハレルヤ」が荘厳にかぶさる。

聖書に出てくるストーリーらしい。原題は「THE ROBE」、日本タイトルは抹香臭いけど英語にするとなんということはないんですね。この年の全米ナンバーワンヒットになったそうだ。でも、基本的に地味でまじめな宗教映画になっている。バートンよりも従者役のビクター・マチュアの方が輝いている。出番は多くはないが、存在感はバートンを圧している。

それにしてもシモンズはどうして「ローマ」ではなく、こちらに出たのか。「黒水仙」(47)で注目され、「ハムレット」(48)で人気女優になったシモンズの路線とすれば「ローマ」になりそうだが、大作の方が良かったのか。「聖衣」のシモンズはなんということはない。少女の頃からバートンにあこがれていたというのも説明不足だし、信者になっていく過程も唐突だ。ラストは「ハレルヤ」で祝福されるとはいえキリスト教の宣伝映画みたいで、頭ではわかるが諸手を上げて感情移入するわけにはいかない。信者ならば違うんだろうけど。

ローブを手にしたバートンが信仰に目覚めるくだりもピンとこない。信者ではないせいなのだろうが、命がかかっているのだからそんな簡単なことではないだろうとつっ込みたくなる。

シモンズは58年の「大いなる西部」でようやくウイリアム・ワイラー監督作品に出演する。主演は「ローマ」のグレゴリー・ペック。ワイラー監督は、一度は袖にされたけどシモンズにずっとご執心だったようです。


ペテロでつまらないことを思い出した。「天使にラブソングを」の項でもらしていた。修道院にかくまわれたウーピー・ゴールドバーグ。12使徒の名前を言ってご覧と問われて「ジョン、ポール、ジョージ」。ここまではいい。ヨハネ、パウロ、ゲオルギウスの英語表記だからだ。次にウーピーが「リンゴ」と挙げて尼僧たちをがっくりさせる。こんないたずらもしゃれている。ペテロはピーターです。念のため。

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コメント

「ゆり」から、ふらふらと「ベンハー」へ。
面白すぎて、仕事の手がストップ。
散歩人さん、面白すぎます。どこまで興味のアンテナがのびているのでしょう。
また「ベンハー」を観たくなりました。長編ものはなかなか観る気力・体力がなくなって、気合がいる「年頃」になりました。(笑)
それにしても、お話の面白さにすっかりハマってしまって…。
この年末の忙しいときに、思わず現実逃避です。
わくわくのブレイクタイムはここまで。さて、もうひと仕事がんばります。
小雪が舞っている松江より。

やまけいさん。

東京も寒いです。気象庁の数字は、都心のものなので多摩地方は3度から5度は低い。
仕事が片付いたら、ぜひ「ベン・ハー」を。

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