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2010年2月27日 (土)

近藤勇・産湯の井戸・その5

新選組の映画は戦後も作り続けられる。「伊藤大輔監督の戦前の名作『興亡新選組』(1930)にはとても及ばないが、…これはこれで楽しめる骨太の娯楽映画」(日本映画作品全集、キネマ旬報社)と微妙な褒められ方をしている東映の「新選組」(監督佐々木康、1958)が一応の代表か。近藤勇は片岡千恵蔵が熱演している。そのほか、「新選組鬼隊長」(1954)、「壮烈新選組幕末の動乱」(1960)=以上東映=、「新選組・始末記」(1963、大映)、「新選組血風録・近藤勇」(1963、東映)などがあげられる。三船敏郎が近藤に扮した「新選組」(1969、東宝)は、沢島忠監督によるオールスターキャストの豪華版。中村錦之助、三国連太郎、北大路欣也らが共演したが、欲張りすぎて拡散した内容になってしまった。

近藤中心の捉え方から流れが変わるのは篠田正浩監督の「暗殺」(1964、松竹)から。主人公は清河八郎(丹波哲郎)にすえた。幕府を欺いて浪士隊を結成、京都に入って尊王攘夷の勅諚をもらい、倒幕勢力に仕立て上げようとした策士に焦点を当て、幕末の動乱を鮮やかに描き出している。原作は司馬遼太郎の「幕末」だ。坂本龍馬はなんと佐田啓二、年を取りすぎている感じもするキャスティングだが、重厚感を持たせようとしたのかな。

新選組のとらえ直しはすでに司馬遼太郎がはじめていた。1962年から週刊文春で「燃えよ剣」の連載が開始されたのだ。主人公は近藤ではなく土方歳三。大国魂神社のくらやみ祭りから始められる。男女の自由な出会いが許された祭りの夜、宮司の娘との半ば強引な出会い、そして近藤を支えた冷徹な組織者として描き、函館戦争まで戦い抜いた姿に「最後の武士」を見る。

「燃えよ剣」は11月から2年後の64年3月まで連載されたが司馬は5カ月前の62年6月からサンケイ新聞で「竜馬がゆく」の連載を始めている。大きくくくって勤王と佐幕の両面から幕末をとらえようとしたのだろう。

こうした中で歳三ブームが巻き起こり、沖田総司がアイドル的な人気を博すことになる。1965年にNET(テレビ朝日)で「新選組血風録」がドラマ化された。歳三は栗塚旭。これが当たり役になった。欲念の1966年には「燃えよ剣」が映画化、歳三はもちろん栗塚、勇は和崎俊哉、総司は石倉英彦だ。この年の1月には歳三を内田良平、勇は小池朝雄、総司は杉良太郎でテレビ東京がドラマ化してもいる。

1970年にはテレビ朝日がドラマ化。歳三は栗塚、勇舟橋元、総司は島田順司だった。評判になり新選組は悪役から人気者になってしまった。特に総司ブームはとどまるところを知らなかった。女性ファンが退去して麻布の総司の墓を訪れ、絶えず訪れるので今では命日にしか立ち入れないようになってしまった。

明治維新から100年を経過、幕末の血みどろの戦いもはるか彼方のことになってしまったのか。おそらくブームの背景には「善」でも「悪」でもない新選組があるだけだ。価値観をなくして漂う新選組は、すでに歴史的な存在から離れてしまっている。それではつまらないではないか。反革命集団として否定されながらも、武士としての生き方を貫いた姿にこそ美学があるのではないか。04年にはNHK大河ドラマで「新選組」が放送された。歳三の兄役で栗塚旭が、死期の近い総司をかくまい療養させた植木屋で、かつてブームを巻き起こした島田順司が出演していた。脚本の三谷幸喜の遊びと言うかオマージュだったのだろう。今放送している「龍馬伝」で新選組はどう描かれるのか。

評論家の佐藤忠男さんは「日本映画思想史」(三一書房)の中でこう位置づけている。客観的に見れば佐藤さんが正しいのだろう。「新選組というのは、明治維新における反革命暴力集団みたいなものだから、歴史上の役割から見て彼等を支持する人々というのは現代ではほとんどいないはずである。にもかかわらず、映画の時代劇のなかでは、新選組は、昭和一〇年代から今日まで、かわらぬ人気をもってつくられつづけている。べつにかれらを、英雄だとも、正義の士だともいわないにもかかわらず、かれらはいわゆる憎々しい敵役とは違う一を幕末ものの時代劇の中で確保しつづけてきた」

その理由を次に解説する。

(長くなってしまったので次の回に改めます)

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