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2010年2月27日 (土)

近藤勇・産湯の井戸・その6

佐藤忠男さんの解説の続き。

「これは、たぶん、新選組というのが、一つの意地に生き抜いた集団であるとうところからくるのではなかろうか。かれらは百姓から武士になりあがろうとして懸命に努力した。しかもそれは、卑屈な態度で支配階級にとり入るというようなやりかたではなく、あくまでも堂々と、自分たちの能力を誇示しながらやり抜いた。しかし、無知な百姓あがりや素寒貧の浪人あがりの悲しさからか、天下の大局を見る目をもたず、滅びる側についたために、その努力は挫折した.しかし、挫折しながらも、既成の佐幕派の武士たちがろくに戦いもせず時勢に流されていったなかにあって、とにもかくにも全力をつくして敗れて死んだ。つまり、バカはバカなりに、意地だけはたてとおした。その、意地だけはたてとおしたというところに、現代の観客の泣きどころに触れるものがあるのだと思う」。

バカよばわりである。「天下の大局を見る」と「時勢に流され」はどう違うのか。大局を見て日和見を決め込んだ方が良かったのか。近藤は武士になりたかった。多摩は天領でもある。佐幕になるのは必然でもある。立場は尊皇佐幕だった。ために、時代に乗り遅れてしまった。

新選組が戊辰戦争で敗れ、甲陽鎮撫隊を組織した時に近藤は、甲府を抑えれば10万石の大名にしてやると手形をもらった。実は勝海舟らに体よく江戸から移動させられたというのが真相らしいが、近藤はこのとき本気で大名になることを夢見ていた。土方には5万石、沖田には3万石をやろうと約束したという。

司馬遼太郎は「燃えよ剣」で、「幕府瓦解のときに、大名になることを考えた男は、近藤勇ただ一人であったろう」と皮肉を込めて一行を記している。近藤はこっけいである。でも、愛すべき思考だ。時流に乗ることだけが正しいわけではない。時代の波にあらがった生き方だってあっていい。

薩長だって自藩の利益のために尊皇攘夷を利用した。開港によって日本の鉄や木綿を扱う商人は大打撃を受けた。外国の安い鉄や木綿が入ったためだ。商人たちは自分たちの利のために攘夷を口にした。「幕府中心の政治をやめさせて、幕府もふくんだ日本中の大藩の連合体による政治をして、どうせ開港するなら、利益を分けあおうという考えが徳川氏と親戚関係にない外様大名などから起った」(加太こうじ著「興亡新選組」)。こうした背景があって時流は維新に傾いた。だから、明治になると攘夷のスローガンはすぐにおろされた。攘夷なんかできっこないとは薩長も考えていた。ただ、維新に力を結集するために攘夷を唱えていたにすぎない。

加太さんの先祖は幕末には政商だった。幕府が敗れ家産を失った。父親の菊太郎氏についてはこう記している。「一徹なところがあって『日の丸なんてものは、ご一新のときに薩長のやつらが東京へ持って来たもんだ。江戸っ子の旗じゃあねえから、加太の家では立てる必要はない』といって、日の丸を門口へかかげることもしなかった」(前掲書)。

ご自身についても「そんな家に育ったから、わたしは薩長がきらいで、彰義隊、白虎隊、新撰組などには比較的幼い頃から興味を持っていた。子ども心にも家計が苦しいのは薩長藩閥政府に連なる人びとが天下を取っているからだと思っていた」。

こうした心情は戦後すぐに生まれた私の中にも少しは残っている。だから、多摩が生んだヒーロー近藤や土方の一途な生き方に共鳴したくなる。

明治になって多摩は自由民権運動の拠点となった。自由民権運動と 新選組の土壌は同じだと言ったら驚くだろうか。近藤らを支えた豪農たちが明治になって自由民権運動を戦った。こちらは別の機会に触れていく。

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コメント

 ずいぶん前に木工所のタイちゃんの話がありましたが、その後再会しましたか?タイちゃんは今はなにをしてたんでしたっけ…。

戸塚の純ちゃんへ。タイちゃんは親の代からの木工所をついでます。いきさつは知らないけど天然理心流の師範です。そのくだりはこちらhttp://irumamusashisanpo.cocolog-nifty.com/irumamusashisanpo/2010/02/post-708e.html です。カテゴリーの「三鷹市」の下の方にあります。

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